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1587<道満丸景虎と小姓の戯言>(天正戦国小姓の令和見聞録)HB

人類の歴史を戦国の小姓の視点で深く追究していきます。

「パッセンジャー、監督の真意」

天正戦国小姓の令和見聞録0122>

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春日山城、鳴海幕

お屋形様:上杉道満丸景虎

見聞録検め:小姓

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天正四百五十一年 十月二十一日

 

パッセンジャー、監督の真意」

 

先日他の小姓から「パッセンジャー」というタイトルのSF映画を拝見させていただいた。太陽系外の地球に似た惑星へ移住するため1000mの巨大な宇宙船は、120年もの年月をかけて旅だったのでござるが、民間企業が誘導するこの企画旅行にはおよそ5000人の乗客と260人ほどのクルーが乗り込んでおる。120年間冬眠ポッドで過ごし、目的の惑星に到着する4ヶ月前に目覚めるようコンピューターの完全管理でセットされていたはずだった。ところが、宇宙船は隕石との遭遇で、システムに異常をきたし、乗客である一人のエンジニアの男が出発して30年目で目覚めてしまうのじゃ。目的地まであと90年かかると知り落胆するのは当たり前の事じゃて。再び冬眠するのは不可能であったからでござる。アンドロイドと仲が良くなっている内に、孤独な日々の繰り返しにその男は、ファンでもある女流武芸作家オーロラが同じ企画旅行に参加し、冬眠ポッドで眠っていることを目にする。こともあろうに、彼は道徳心をなくして寂しさのあまり強制的に彼女の冬眠を解除させてしまうのじゃ。最初はシステムの故障で冬眠ポッドが異常をきたし覚醒してしまったとウソを付き、精神的に落ち込んでいるオーロラと恋におちいる。しばらくして、アンドロイドが彼女に覚醒した理由を暴露してしまい二人は対立するのは目に見えている。強制的に覚醒させたのは殺人に近い罪になる。戦国も令和もそれは変わらぬ罪でござる。彼女の思いは日を追うごとに男との確執を倍加させていく。当然でござろう。その後、もう一人の老人の男がシステム異常で覚醒し三人となり、宇宙船の異常を調べることになるのじゃが、その老人は急死する。再び隕石が宇宙船を襲い二人は必死で宇宙船を守った。そしてわかったことが一つあったのでござる。一度覚醒してしまった冬眠ポッドは二度と使えないが、老人の冬眠ポッドはやり方次第で再び冬眠できるものだったのでござる。使えるのは1つだけじゃ。男は彼女に再び冬眠ポッドであと90年眠り、目的を遂行するよう薦める。内心は引き留めたかったが。彼女も気を使って自分だけ行くと言うことはできないでいた。知らないところで惹かれ合っていたのであろうか。オーロラは単なる男女間の恋愛には興味はなく、文学者であった父を超えることで頭の中は一杯だったはずでござる。さて、ここで二人はどうしたのか。このエンディングに賛否が分かれている。拙者ががっかりしたのは、二人はこのまま宇宙船で人生を全うすることだった。それは余りにも俗化した恋愛物の類でしかなく、この作品の質を落としているからじゃ。男はやはり強制的に冬眠させなければならない責任があったはずでござる。彼女が自分の目的を達成させるようにするのが男としての器だったのではないかと感じる。つまり自己犠牲が男には必要でござった。もう一つは、二人の行く末を曖昧にし、鑑賞者の想像に任せる手法や誘導もあったはずじゃ。ほんとうに悔やまれる作品でござる。人によっては見ていてフラストレーションがたまってしまっただろうと推察つかまつる次第でござる。この映画には陳腐なラブストーリーで締めくくり視聴者には大きな不満が残ったと聞き及んでおる。オリジナルの脚本ではジムとオーロラ以外の乗客全員が亡くなるとされていて、遺伝子工学で生まれた子供達の末裔が120年後の最終地点まで生き延びるという設定らしいが、拙者の案では、ジムがオーロラを再び眠りのポッドに戻し120年後に目的地の惑星で再び生き返えらせる。彼女はそこで一年間滞在し、再び百二十年をかけて二百五十年ぶりに地球に生還し、その体験記を書籍化にする、という壮大なものでござる。彼女は目的の惑星のコロニーに1年間過ごした後、再び地球に帰るという考えをもっていたようじゃ。男女の何の変哲も無いやりとりで終わるエンディングでは誰も納得せぬであろうな。そなたはどう思われる?とりとめのない話でござれば。許されよ。

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