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仁科広嗣の「新歴史の研究」 ●THE NEW HISTORY EYES●

仁科広嗣の「THE NEW HISTORY EYES」は人類の史書を後世に残すミッションを帯びており、新しい視点での歴史の検証を追究していきます。<潮流戯画手帖>

THE NEW HISTORY EYES...Vol.0012

THE NEW HISTORY EYES

Presented by hirotsugu nishina

 

Vol.0012…「21世紀トップリーダーのミッション・イン・ポッシブル」

 

 帝国や諸国を治めるトップリーダーの器量に関心を寄せる歴史学者や現役の権力に携わる人を推し量る機会は数え切れないが、模範となり得る指導的立場の人間は数えるほどしかない。中国の前漢が滅び、一年ほど新王朝が建立されるが、劉秀で奪還し後漢を築いた歴史的事実は今になっても世界中から畏敬の念を抱かれている。諸葛亮孔明曹操毛沢東も彼を師と仰いでいる。孔明劉備玄徳の軍師としては余りにも有名だが、それを持ってしても超えることが出来ないトップリーダーへの器量の壁があった。曹操三国志での主役的位置に有り、リーダーとして度量が大きく、子息曹丕(そうひ)が後漢から禅譲された魏王朝の礎を作ったが結局彼は皇帝にはなれなかった。皇帝自ら前線の指揮をとり果敢に戦う筋金入りのたたき上げという、歴史上例のないリーダーとしての器量に対しては誰しもが尊敬と畏敬の念を抱いている。いま世界の各国の現役のトップリーダーの器量は文明史においてはどう見られているのだろうか。目下米国のトップリーダーの地位にあるドナルド・トランプ氏に至っては人徳や常識は通用しないようだし、交渉の手法はビジネスライクで相手との最良の形にまとめ上げる器量も持ち合わせていない。それが国や他の国々との軋轢を生んでいる。国内に至っては分断と対立と格差・人種差別を呷り続けている。その調整能力には限界があるように見える。北朝鮮との休戦から終戦に持って行くことは鼻から考えてはいなかったようだ。軍師の役目を担う側近もトランプ氏に諫言するもすぐ左遷する有様はトップリーダーとしての器量が無いという事を証明しているようなものだ。ドナルド・トランプ氏の家系は代々不動産ビジネスでの合法的な抜け道で財を築き上げてきた。毎年の税金を納めた証明書は依然として頑なに開示を拒んでいる。勘ぐればキリが無い。米国内でもデラウェア州60万人の人口のところに、六十万社以上のペーパーカンパニーがあるが、税逃れにマネーロンダリングに手を染めたと疑われても仕方があるまい。岩盤支持層だけへの政しか目がなくても大統領になれるのだから、米国はもはや死に体と思われても異論を唱える人はいないと考える。

 安倍晋三氏は約8年の間日本の政の長として君臨したが、政策の実現には道半ばで中途半端な印象を受ける。三本の矢と謳われていた新成長戦略は折れてしまい、2020年のコロナ禍での難しい舵取りが自らの病によって出来なくなり、二度目の途中退場という結果になってしまった。一度目は致し方のない状況ではあったが、二度目は政に専念すれば一定の解決策は施されたはずであり、厳しい言い方をすれば、優柔不断・責任回避というレッテルが貼られても仕方があるまい。それまで軍師役だった菅氏が後任の首相に選ばれたが、独自のカラーを作れて国民の負托に答えられるかは未知数だ。中国側は、農家の出身でたたき上げでのトップリーダーのポジションニングはイメージになく、対応に苦慮する状況にあるらしい。安倍晋三氏は大政翼賛会の中枢にいた岸信介氏の血脈で日中関係での壁になっていたが、菅氏はまったく関係のない経歴とたたきあげの方なので、中国側は戦争での被害妄想戦略が出来なくなり外交の優位性が崩された格好だ。ホワイトハウス側では二階氏は親中派媚中派と騒いでいるようだが、気にする必要は無い。今後日本独自の外交で中国・韓国・北朝鮮とは毅然と接するべきだ。これまでのトランプ政権へ媚びを売る外交は今後薄くなるとみる。

 トランプ大統領は4年前選挙に勝てるとは思ってはいなかった。投票前はクリントンが100%勝利するとメディがそろって世論を形成していたからだ。ヒラリー氏はまさか敗戦するとは思ってもみなかった。敗戦の弁を見ればその悔しさがひしひしと伝わってくる。私的メール使用問題とか国家秘密漏洩問題・クリントンキャッシュ問題・健康問題・民主党候間でのいざこざが、トランプ不利の状況を変えてしまったのだ。それが「隠れトランプ票」を呼び覚まし大逆転でトランプ大統領が勝利した。彼が就任してからは、事実上効力の薄い大統領令を乱発し、岩盤支持層向けの政を優先させ、国内の分断化と人種差別や経済格差の増大を加速させた。世論調査ではバイデン氏(副大統領候補はハリス氏)にリードを許しているトランプ氏の再選は難しい局面にある。猛追はしているものの選挙日までは状況は変わらない。2020年は「隠れバイデン票」(トランプ氏に嫌気がさした共和党支持者のこっそりバイデン支持)がキャスティングボートを握っているかもしれない。恫喝交渉が得意なトランプ大統領金正恩との何回かに渡る会談でも成果は残せなかった。イスラエルパレスチナの不仲を助長させ、地球温暖化やWHO脱退まで進み、イランとの核合意も途中で破棄して、ロシアとの核拡散防止協定も破棄してしまう。ゴルバチョフ氏とレーガン氏がせっかく築き上げた合意も棚上げにしてしまい、世界のミリタリーバランスが崩壊してしまった。

 中国の一帯一路政策は大唐王朝元王朝の覇権を彷彿させるが、香港の一国二制度の50年間保証は反故してはならないと考える。まだ27年もの保証期間を香港市民に付帯する義務は習近平氏(中国共産党皇帝)にはある。100年200年の先を見て政を考えるのが本来の中国皇帝の本筋ではなかろうか。台湾にしても柔軟な対応が必要だろう。どのみち、中国大陸やロシア、朝鮮半島では民主化が形成されるだろう。世界秩序は今世紀中には変わる可能性はある。さもなければ人類は破滅するしかない。

 自国優先主義は文明崩壊のはじまりに過ぎない。いつの時代でも紛争や戦争はそこから沸き起こった。人類の各時代の歴史がそれを物語っている。戦争を知らない世代がまた戦争を繰り返すのはもはや仕方が無いのだろうか。言葉だけの継承で平和は維持できる保証はどこにもない。血と汗と紛争を体現しないとその切なさに近づけないのには本能的に理解はできる。大手メディアは体制側に利用される習性があり客観的に明察を欠く嫌いがあることを忘れてはいけない。戦前の軍部の大本営の暴走やイラク戦争での大量破壊兵器プロパガンダはそのいい例だ。歴史学者や政治家や作家やアーティスト・ジャーナリストは公平に世の太平を形成していくミッションを帯びている事を肝に銘ずるべきだ。その任務は果てしなく重い。