1587<道満丸景虎と小姓の戯言>(天正戦国小姓の令和見聞録)HB

人類の歴史を戦国の小姓の視点で深く追究していきます。

「大岡越前の一平・翔平の名裁き」(奉行所での問答篇)

<道満丸景虎と小姓の戯言0216>episode216,season3

天正戦国小姓の令和見聞録)

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春日山城、鳴海幕府(開府1587年)

お屋形様:上杉道満丸景虎

見聞録及び戯言検め:小姓 仁科源太

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天正四百五十二年 四月十二日

 

大岡越前の一平・翔平の名裁き」(奉行所での問答篇)

 

 MLBでは令和の時代になっても一向に博打騒ぎが後を絶たぬ。お屋形様は奉行ではないので何とも申さぬが正義感と義の厚さだけは人の十倍はお持ちでござる。ここは吉宗殿の許しを得て、かの大岡越前が参じておる。はてさて、どのような名裁きが観られるか見ものでござる。加害者と被害者がまだ現れぬ。かわら版どもが騒々しいのでいましばらくお待ちあれ。

 

南町奉行所

 

大岡越前守お成り~」

「一平殿とやら、翔平殿も面を上げられよ」

「ハハー・・・」

「見回り同心によると、一平殿はMLBの敷地で狼藉を働いたと聞き及んでおる。野球武芸で亜米利加の地を踏んだ修行青年の金子を盗み、博打に使い果たしたとある。それに違いないか・・・」

「間違いございません。言葉仲介人の立場を利用して修行青年に気づかれないように騙し取りました」

「そうか、分かった。今日は其方たちの言い分を存分に聞かせてくれぬか。聞いた暁には其方達に裁きの通達を申し渡す。包み隠さず申した方が身のためである」

「大岡様、正直に申し挙げます。あっしは翔平殿と伴天連の地へ赴いた折、彼の巾着袋の金子を博打に使い果たしておりました。負けがこんでおりやして、借財が二十四億円に膨らみ、胴元に翔平殿の巾着袋から金子を横領し胴元の頭へ早駕篭で届けさせてしまったのでございます」

「一平殿、それはまことか?」

「まことでございまする」

「して、翔平殿は全くそれに気づかなかったということであるな」

「面目ござらぬ。FAでの契約更新とか正室を迎えたばかりで、信頼しておった一平殿が博打に手を出すとは想いもよりませなんだ。金子の管理では他の者の関わりをしっかり封じておったのですが、上手く入り込まれました」

「日頃の金子の管理は一平殿に抱っこにおんぶってところであるのじゃな」

「一平殿には日の本でのデビュー以来、世話になっており、伴天連達の通訳も金子の管理も送り迎えも全てお任せという事になりおりました」

「それで其方は、プレーに専念でき、球投げと球打ちで一千億円もの金子を稼ぐようになったわけじゃな」

「少しやり過ぎて右肘を壊して手術まで至りましたが、球投げ球打ち球団の多くのオファーがあり、念願の度蛇亜巣に入団いたしました」

「その矢先に、一平殿が自分の悪巧みを自白した訳でござるな」

「最初の頃は、ちょっとくらい良いかなという感じで、博打につぎ込みましたが、勝つときもあれば負ける時もございました」

「博打で得た金子は汗水垂らして得た尊い金子と比べてはならぬ。いわば浮浪の金子じゃ。負ければ地獄の世界が待ち受けておる。博打依存症が治るのには長い年月と自己抑制の修身が必要じゃ。博打の負けは博打で取り返すというのは笑止千万。人類の有史以来博打の遊興心はなくならぬ。役所の年貢が増えるからと言って合法化させる様な国には未来は無い。努々心得よ」

「発言の撤回は博打の胴元からの執拗な連絡で止むに止まれず、翔平殿にバレるのは時間の問題だと想い、とっさの判断でございました。通訳の仕事はいくらでも人を騙せる立場にある故、魔が差してございます。大谷殿が記者会見で潔白を表明しましたが、世間では金子を多く持っている者に対しては、羨ましさと嫉妬で少しの事でも嫌疑が生まれてまいります。無実の人でもメディアは厳しく突っ込む風潮がござれば、これではいかんとお奉行に出頭致した次第でございます」

「一平君、そこまで悩んでいたんだね。ちーっとも知らなかった。気づかなかった僕にも責任はあるかな。でも、良くもまあ、持ちよく使い果たしたもんだ。博打の借財では金子は相談されても貸せないが。僕の口座によくアクセスできたね。どうした訳?」

「翔平殿が伴天連で口座を開設したとき、あっしと一緒に手続きしたでしょ。そのあと代理人としてあっしの名前で連絡先を登録し、翔平殿に直接知られないように細工を。パスワードなどは知っていた。銀行への電話連絡はものまねで騙せたよ・・」

「一平殿、そう自慢げに語るでない。人には善意と悪意が共存するものじゃ。魔が差すのは致し方なかろう。さりとて、金子の額が多すぎる。多い少ないの問題ではござらぬが。翔平殿は一平殿の自白がなければ、一千億円の金子も危うく無くなるところじゃった。伴天連での司法取引では事細かに取りかからねばならぬぞ」

「ハハ-」

「大岡様・・・火急の用で上様がお呼びでございます」

「なんじゃ」

「伴天連での奉行で調査が終わったそうでございます」

「そうか。あいわかった。新たな証拠がでて参ったようだな。一平殿、翔平殿はその場で待っておれ」

 

二刻後・・・

 

「大岡様、お戻りでござる~」

「一平殿、翔平殿、待たせたな。面をあげられよ」

「ハハー」

「両名に沙汰を申しつける」

「ハハー」

「一平殿にはケイマン諸島への遠島を申し付ける。タックスヘイブン不労所得に胡坐をかいておる者どもを調べあげ、この大岡に逐一知らせよ。さすれば刑は軽く致す故。博打癖も治せねばな。精進いたせ・・・」

「ハハー」

「翔平殿には、エントウを申し付ける」

「大岡様、何故でございます。僕は何も悪いことはしておりませぬ」

「わかっておる。だからエントウなのじゃ」

「お言葉の意味が分かりませぬ」

「遠投の意味もわからぬのか。リハビリに励めということじゃ。其方に咎めなどあろうものか」

「今年はディー叡智に励みます」

「タイトルを期待しておるゆえ、精進いたすのじゃぞ・・・。それともうひとつ。正室を大事に致せ。人を余り信用してはならぬ。何事も人任せにしてはならぬぞ」

「ハハ-」

 

これにて一件落着。

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